虫歯の恐怖
最近めっきり空気が冷たくなってきた。それを毎年いち早く感じ取るのは私の前歯である。
昔虫歯になり治療した前歯。しかしそれ以来知覚過敏気味になり、特に、急に冷えた朝の空気には過敏に反応するようになった。
先日、前歯の疼きと共に目が覚めた。今年もそんな季節になったか、と多少の不快感を覚えつつも毎年の風物詩的ムードでそれを迎えた。どうせ昼になって暖かくなってくれば治まるさ、と。そして体が寒さに慣れれば鎮まるさ、と…。
しかし今年の疼きはなかなか治まるところを知らず、むしろどんどん痛みを増してくる。やっばいなぁ…、と思いつつ、やむを得ず解熱鎮痛剤で誤魔化すことにした。ま、多少長引いてるけど薬飲んで一晩すっきり眠れば大丈夫さ、と。
3日目。遂に薬は何の効果ももたらさなくなった。痛みは脈打つように響いている。仕事から帰り、ネットで歯痛の応急処置を調べる。「歯医者に行く」以外で最もHITしたのが「ツボを押す。」藁にもすがる思いで試したが、やはり所詮藁だった…。更に「今治水」という古くからある薬。虫歯に塗布すればたちどころに痛みが消える代物らしい。これさえあればバラ色の人生再び、と思い薬局へ馬を飛ばした。そして手に入れた虫歯患者たちの「聖水」。早速痛いところに塗ってみる。独特の味が口に広がる。良薬口に苦し、効かなくても口に苦し…。
もうすがるものはなくなった…。歯医者以外…。あぁ、行きたくない。
とうとう、一睡もできなくなった。思い切って救急車でも呼ぼうか、というほど人生最大の危機。できることはパソコンでひたすら「痛みなく治療してくれそうな♥」近隣の歯医者を探すこと…。
次の日、仕事を休む。痛みと戦い続け、身も心もボロボロだ。特に精神的に知覚過敏になっている。雪山で遭難しても虫歯持ちならきっと死なずに済む。徹夜で調べピックアップした歯医者は3つ。はやくて9時から。こんなに歯医者が待ち遠しかったことはない。8時を過ぎ、さっそく歯医者に電話。最初は最も痛みを与えなさそうな印象を持った所から……早くて午後5時の診察。もうそんなに戦えない…。では人にやさしい歯医者第2位に電話。ここは10時からなのだが…、やはり電話に出ない。早過ぎるか。やむを得ず第3位に電話。11時ならOKとのこと。どうする、2位の診察開始を待つか、それとも妥協するか…歯の痛みを暫し忘れるほどの激しい葛藤!
「お願いします」
背に腹は代えられない。第2位が何時に受け入れてくれるかもわからない今、後手に回ってはそれこそ命取り。それにしても11時まではまだ3時間近くある。その時間も今の私には気の遠くなるような時間だ、いや気を失えるなら失いたい。
というのは金曜日の話で、月曜である今、お陰様で、歯の痛みは治まった。しかし痛くない歯医者は存在しないことはよくわかった。治療前から出ていた熱は日曜昼まで38度から下がらずいまだに微熱が続き、あまりに長い時間歯痛と戦ったせいか現在顔に多少のマヒが表れている。「虫歯は怖いよ」とはよく聞くが、今回ほど身にしみたことはない。でもやっぱり歯医者も怖い。



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